あの日を思い出して。

諦めの悪い方です。ゆっくりやっていこう

曇り

 以前のお話はこちらから。

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『泣き虫ルディア③』 作:ハイミドリ

 

ファロは無残に壊された楽器にそっと触れ、優しく抱きかかえました。

小さく呻きながら、ずっと、うずくまっていました。

ルディアは胸が苦しくなるのをこらえながら、ファロが立ち上がるのを助けて

ジルに導かれるまま宿まで連れて行きました。

もう外は暗くなり始めていました。

だけど、ファロとジルだけにはしたくなくて、家に電話をお願いしました。

電話の向こうのお母さんは、少し事情を知っていたので許してくれました。

 

部屋に戻ると、ファロは椅子に座ってテーブルの上の壊れた楽器を見つめていました。

真っ暗になる前にランプに火を点けて、小さな暖炉に火をくべました。

すると、ファロはポケットから便せんを取り出し、手紙を書きだしました。

ルディアはまだ心配だったけど、食事を取りに部屋を後にしました。

食堂で宿の女将さんが何があったのかと聞いてきたので、広場の事を伝えました。

「あそこのご子息は、欲しいものなら何だって手に入れるのさ」

大きなトレイに二人と1羽分の食事を置きながらこう続けました。

「手に入らないと分かった途端に壊して歩く。そうやって育ったのだろうねぇ」

「…いつか、気が付いて直ってくれる事を願います」

女将さんは溜息をつきながらサービスだとバターミルクの飴を付けてくれました。

 

部屋に戻ると、まだファロは手紙を書いていました。

ご飯を食べましょう。とルディアは声をかけたけどジルしか返事をしませんでした。

ジルがファロの肩に止まってうるさく鳴いて、やっと気が付いたようでした。

スープの湯気が鼻をくすぐり、ファロのお腹が返事をしました。

暖かくなった部屋で、ジルが明るくさえずり、ルディアはパンを切り分け

ファロは味を確かめるようにじっくり食べていました。

優しく静かな食事が終わった後、食器を下げ終わったルディアにファロが手紙を

渡して来ました。そこにはこう書いてありました。

 

『ルディア、今日はありがとう。

もう私はこの先ずっと話すことは出来なくなり、ジルも人に戻れなくなりました。

突然こんなことを書いて驚かれるでしょう。

今、この様な状態になって話すのもおかしな話ですが、あの楽器にはまじないが

かけられていて…私は言葉を失い、ジルは姿を変えました。

唯一解くことが出来るのは、一番大切な人の心を震わせる事でした。

その為に各地を渡り、演奏してきたのです。…でも、それももう叶いません。

何故なら、まじないのかかったその楽器が、壊れてしまったから。

私は、ルディア、自分の為にあなたを騙した事になります。ごめんなさい。

失望したでしょう。ですからどうぞ、私達を見放してください。

申し訳ない。今まで本当に、ありがとう。』

 

読み終えたルディアは…ジルもファロも表情が読めないようでした。

しばらくの間、沈黙が部屋を満たしていました。

それから、ルディアは小さく震えだし…ファロに抱き着いたのです。

驚いてるファロに、泣きながらルディアは言いました。

「私が、不幸を呼ぶから…ファロはもう話すことが出来ないし、ジルも人に

戻れないなんて…!ごめんなさい、ファロ、ジル。私は死神だけじゃなく、疫病神

でもあったんだ!大切な人達が、どんどん不幸になっていく…。みんな私に関わった

から。私はどうやって償えばいいのか分からない。私は二人の夢を壊し……」

そこまで言葉を続けると、ファロはルディアを引き離し、口元で人差し指を

立てました。シーーッ…。ジルも変な空気にルディアの側に飛んできました。

 

すると、風もないのに部屋の明かりが消え、テーブルの上の壊れた楽器に

光りが淡く点り、その光が何かの形になっていきました。楽器に宿った精霊です。

「よく耐え、よく尽くしました。人の子。

私はあなた達を許し、手放すでしょう。畏れる事はありません。

あなたの罪は雪がれ、私をも浄化しました。祈りを受け入れましょう」

低く穏やかな声で精霊は厳かに告げました。

精霊が両手を広げ、掲げると…精霊を形作っていた光の粒が弾け飛び

ファロの首とジルの体を包み込みました。

光はやがて渦になり、部屋中を満たしルディアは目をぎゅっと瞑りました。

 

どれくらいの時間が過ぎたのか…しばらくして、部屋にランプと小さな暖炉の明かりが

戻りました。目を開けると、目の前にはファロと青年が立っていました。

心配そうにルディアを見つめています。

「る…ルディア、大丈夫かい?」

しわがれた、温かい声がファロから聞こえます。

ルディアは初めて聞くファロの声に驚きながらも、心の底から嬉しくなって

飛びつきました。ファロは目を丸くして抱き留めるも、どうしていいか分からず

慌ててしまいました。その姿をみた青年は歌うように笑っています。

「ルディア、そんなに強く抱きしめたら父さんの骨が折れてしまうよ」

「ジルベルト、私はまだそんなに弱っていないぞ」

優しくルディアを支えながらファロは返します。ジルはファロの息子だったのです。

ルディアは少し赤くなってジルにお辞儀をします。ジルも優雅に返しました。

そして、ジルは片ひざを附きルディアの手を取り感謝を伝えました。

「父の声を戻して下さり、ありがとうございます。私は、あなたの芯の強さと優しさに

心を打たれました。この先、すべてをかけて守りたい。どうか側に居させてください」

ルディアは顔を真っ赤にして、小さく「はい」と答えました。

その頬には温かい涙が流れていました。

 

辺りが暖かさと幸福に包まれた時、部屋の窓から太陽の光が差し込んできて

壊れた楽器から、フィナーレのフレーズが聞こえた気がしました。

 

 

【おしまい】

 

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『泣き虫ルディア』完成しました(*´艸`*)

 

二日ほど前。私は子供もいないのに、子供達の枕元で語った夢を見て

アウトプットしてみました。たしか、こんなお話でした^^;

もし良かったらコメントやメッセージなど感想を伝えてくれるとうれしいです。

 

名前の由来など書こうかな。

ルディア→リューディヤ…物語という意味。

ファロ→灯台という意味。キーパーソンだから。

ジル→ジルベルト。短縮すると男女問わず使える名前で、正式に呼ぶと男性の名前に

なるように少し悩みました。

 

絵本や紙芝居などをイメージして作りました。

二次創作OKです。知らせてくれたら尚うれしいです。

読んで頂いた方々がどんなイメージで彼らを描いたのか気になります(*´艸`*)

 

 

 

では、今日はこの辺で( ˘ω˘ )♪