あの日を思い出して。

諦めの悪い方です。ゆっくりやっていこう

用務員さんとの語らい

いつもいつもゴミを運ぶことを担当して

うんざりはするけどキレイになれば心がすっきりするから

引きずりながらも焼却所へ運ぶ。

ある時床に袋からこぼれたゴミを見つけてしょうがないなと素手で拾っていたら

「お前、○○か?」とその人は母の名前を口にした。

何でその名前を知ってるの?と思い声のした方を振り返ると

帽子をかぶり作業服を着ているオジサンが幽霊でも見つけたような顔をしてた。

「○○…?」私の顔を見つめて呟いてたので、母の昔の同級生か何かと思い笑った。

私は「それは母の名前ですよ」と言うと、オジサンは顔をくしゃくしゃにして

「いやー、そっくりでびっくりしたよ!」と破顔した。

そしてゴミを持つ私の手を見て「奇麗なお手々が台無しだよ」と呆れられた。

汚れるのは分かりきっていたことだけど目の前のゴミを放置するのは

それはそれであまりいい気分ではなかったので拾っただけだし

これくらい汚れたくらいならきちんと洗えばいいと言ったけど

オジサンは苦笑いして軍手を見せながら火ばさみをカチカチ鳴らした。

「尖ったものもあるから、素手で触っちゃいけないよ」

それからゴミ出しの担当が回ってきてもそんなに嫌じゃなくなった。

クラスや授業の愚痴・笑ったことや悲しかったことを話してとても楽だった。

時々口が悪いのをたしなめられたりして、親切でよく仕事をする人だと思った。

ある時、その人が懐かしそうに目を細めて「お母さんによろしく言っといてくれ」

と言ったので、ある晩私は母にそういう人がいるんだと夕食のときに話すと

母はいつもより表情のある顔になって「どんな風になっていた?」と聞いたので

見たまま思ったことを伝えると難しそうな表情に変わった。

なんだか否定形の言葉をしゃべっていたけど、実際は違っていたので

訂正したら苦しそうな表情になった。未だに何があったのか分からないけど

大人には大人の事情があるんだなとそっとしておいた。

別の日、よろしくと伝えたよと話すと「どうだった?」と聞いてきたので

話していたことをなるべく忠実に伝えた。

すると少々残念そうに笑って「そっか!」とニカッとした。

 

最初で最後にもらったのは、小さな軍手だったような気がする。

 

 

まだまだたくさん思い出せるけど、今日はこの辺で整理を区切っておこう。